2012年5月9日

田中優「震災後の人々の意識とメディアの潮流」について

 日本では2011年の3月11日、そこで大きな地震が起こってついに原子力発電所がチェルノブイリ以上の放射能をまき散らす、というような事態を生んだことで、日本の中で大きな潮流となっているのは、もちろん脱原発もひとつだけれどもう一つは、

「従来型の社会に頼らない別な社会を作っていかなくちゃいけない」という想いがすごく強くなってきた。


その時に人々が考えているのは、

「従来のようなどこか大きなものにぶら下がっていれば社会は安泰に動くという考え方から、そうではなかった、自分たち自身が社会に関わっていかないといけない、自分にできるところから、自分自身も自給していけるように進まなくちゃいけない。

職業についても同じで、どこかのいい企業に勤めていい大学を出れば生活は安泰だという暮らしから、そうではない。日本でも最も大きかった企業である東京電力ですらつぶれていく中で、そういう社会ではなくなった。自分のセキュリティは自分で守るという時代に入らなければいけなくなったんだ。」


という風に思っている人が多いと思います。



 そういう社会になった中で、じゃあどうすればというところに迷っている段階にあると思う。

 そしてメディアも実は日本ではこれまでその最大スポンサーが電力会社だったので、電力会社に不都合な情報は一切流さなかった。ところが今それが出せない状況になってきた中で、メディアが戦後初めてかもしれない、本当のことを少しずつ流すようになってきた。

 そうやって本当の情報が日本の中で流れ始めてくると、実は我々がこれまで聞いてきた話は「ウソばかりだった」ということに気づき始めた。そうすると人々は従来のメディアに満足しなくなり、自分たちでメディアを得ようという風に考えるようになってきた。

 その時に非常にラッキーだったのは、個別の人たちが世界中をつないでそして連絡がとりあえるようになっていった。それがさらにはSNSが発達してきて、もう同時進行で世界中の動きとシンクロしながら動けるような時代になってきた。

 その時にそれを自覚的に動かそうとする人たちも、日本の中にたくさん出てきていて、世界中にももちろん出てきていて、それが僕は次のメディアを変えるだろうと思う。

 ただ(今までの)メディアではなくなり、人々がメディアになることによって、
「真実のデータなのかウソなのかそれを見分ける力が必要になった」と言われるけれども、いや僕は前からそんなものは同じだと思う。


 なぜならば「メディアだって本当のことを流していなかったのに、何をいまさら言っているのか」と言う風に思う。

そういう意味では「人々が自分の意志を強く持つことが重要になった」に過ぎない。
それ以外の状況はまるで変っていないという風に思うんですね。



JAPAN VOICES 田中優・震災後の潮流