2014年3月24日

『家に太陽光発電をつけました。電気を自給しています。』田中優@ライヴ・アースまつやま2013(動画あり)

2013.5.12 愛媛・松山での「ライヴアースまつやま」でのトーク概要です。

『家に太陽光発電をつけました。電気を自給しています。』 田中優@ライヴ・アースまつやま2013 
http://youtu.be/4pnisvJjjNQ



□◆ 田中 優 より ◇■□■□


移住して電力会社からの独立~オフグリッドへ~

 2~3年前から「もう電気は自給できる時代になるぞ」、「屋根の上8畳間ひと分あったらそこで作る電気だけで食べていける、電力会社からの電気は要らなくなる」という話をしていたんですが、それをぼくの自宅で実現しました。

 これまで東京に住んでいましたが、昨年末(2012年末)岡山に引っ越しました。
東京に住んでいた時は実に土地が高くて、東京で21坪の家に買って住んでいましたがその時は5,200万円したんです。ところが岡山に引っ越して161坪古民家付きで580万円、ですから桁がひとつ安いですね。

 そこに引っ越して太陽光発電をつけるのに、普通は屋根の上につけるんですが、古民家なので屋根に乗せるとつぶれかねないので庭につけました。
 そこからの電気を受け取ってプールして、自宅で電気を使っています。

 ところが今日みたいな天気の良い日は電気があり余っちゃうんですよ。
バッテリーには3時間位で全部フル充電される。午前8~11時位でフル充電されてその後実際に発電量が一番多いのは11~14時、ここが一番大きいんですが、ここの部分を受け取りそこねるんですね。

 だから家にいると、こういう天気の良い日は電気があり余っちゃうので“電気富豪のユーウツ”とぼくは呼んでいるんですが、電気を使い切れなくてそのために電動の草刈機や電動ののこぎりだとか、電化製品がやたら増えてしまいまして、それを昼間使ってその電気を何とか役立てようと思って動いているわけです。

 こういう暮らしをすると、何とこれまで命がけで電気を作ってきたのって、アホらしいなって思います。だって現にそれがあれば、ぼくの家が実際にやっているように80日間(2013年5月12日現在)、うちの中国電力会社の電気メーターはピクリとも動いていません。
(この11日後、自宅と中国電力とをつないでいた配電線をカット、電力会社の電気メーターも撤去し、電力会社との契約を解除しました)


(中略)

移住した理由

  そもそもなぜぼくが岡山に引っ越して来たか?
 実はぼくはこの3.11の震災そして原発事故の後にあちこちに呼ばれて行くことになって、当然福島県にも原発や放射能の話で講演をしに行くわけです。

そしてその福島で言うのは、


「残念ながら今の放射線汚染は人間が住むのに適した状態ではないから、いくらテレビやラジオ、マスコミ、政府が何と言おうがここに住まない方がいい、可能な限りここは離れて欲しい」

と話をするんです。


 でも、離れられないのだとしたらこのことに気を付けてねという話をいつもしていました。

 人にそう言っておきながら、東京もすでに汚染されてしまています。残念ながら東京周辺も、放射能の濃度は高いです。その汚染された土地にぼく自身が住んでおきながら、他の人になるべくだったら引っ越した方がいいと言うのは、矛盾だなど思ったんです。

 それならばまず自分自身だって、全然縁もゆかりもなかった土地に突然引っ越すということができなければ、これは理屈が通らないだろうと思ったんですね。

 そこで岡山にたまたま友人のところでビデオ撮りがあって、その友人にぼくはこう言ったんです。 住むんだったらこういうところが良いなぁと。

 そしたらその友人が3日後に物件を見つけてくれて、優さんこんなのありましたけどと送ってきてくれた。そしてそれを見てぼくはいいじゃないか、そこにしようと引っ越してきたんです。 だからほとんど即決で引っ越してきてしまいました。


消費財より生産財を

  だけど、引っ越してみたら本当にご機嫌なんですね。
 何がご機嫌かって、東京に住んでいた時にとにかくぼくは四六時中、消費というものに追いまくられていた気がします。都会にたまに出てくると、色んな看板があるんですね。

 例えばハンバーガーショップやうどん屋、蕎麦屋、色んな看板があって、そういうのを見るとそうだあれを食べに行こうと言ってしまうんですね。でも田舎に住んでみると、看板がないんですよ。看板がないと、何々を買いたいとか消費がそそられることがないんです。

 それで面白いことに気づきました。
 田舎の方に住んでいる人たちの社交場というかよく行く店って、かなり変わったところなんですね。それがいわゆるホームセンター、そこに行くと近所の人によく会います。

 そのホームセンターに売っているものって、例えば都会に住んでいる人がトマトを買う、ホームセンターにトマトは売っていないんですが、トマトの苗を売っているんですよ。

 そしてそこに置いてあるものは全て“生産の用具”が置いてあるんです。
 だから消費財と生産財で分けた時に、実は生産財を買っているのが田舎の人たちで、都会の人たちは消費財ばかり買っているんですね。
 ここに大きな違いが出てくるんだろうと思います。

 今現在、どんどんインフレ方向に進んでしまっていまして円も安くなる、そして株は高くなる、このままいくとやがて崩壊します。これは単なるバブルですから、今買ったら値上がりするから今のうちに買っておこうということだけをやっているので、別に所得は全く増えていませんのでこれは単なるバブルです。

 そうすると、いずれバブルは崩壊します。


 その時にはインフレがものすごく進んでモノを買うにも値段が高くて買えない、その時に強い人はどこかというと、地方の人なんですね。


お金のかからない暮らしを

  自分で生産している側が圧倒的に強くなります。そして生産できるものは従来のように野菜とか食べ物だけではないんですね。ぼくの家でやっているように電気を自給する、生産することも可能ですし、ぼくの家では井戸を復活させて水道代もゼロになりました。
そしてぼくが次に買おうと思っているのが、電気自動車です。

   復活した井戸


 そうすると、ガソリン代もゼロになります。ぼくはそうやって暮らしたいと思っています。


 そうしたら、みんなあくせく暮らさざるを得ないのは、どうしてもお金が十分にないからもっと稼がなくちゃと思って、だけど給料は減っていく一方なのでそのおかげでみんなあくせくあくせくするんですが、逆の方向があります。

 お金を稼ぐことよりも、お金のかからない暮らしをしてしまえばいい。
 お金のかからない暮らしというのが現実に可能なんだなと今はぼくは思っています。
東京では事務所を持ってました。そこの事務所の家賃が毎月12万円しました。それが今はもうゼロです。

 電気料金も水道料金も下水道料金も払っていました。それが今は下水道料金の最低料金だけ。水道料金、電気料金は今はもう払っていません。

 そうなると、おカネを無理に稼がなくてもやっていける暮らしができるんですね。
これがぼくはこれから先のインフレ時代になった時の楽な暮らし方ではないかなと思います。
(中略)


予想される放射能被害と対策

  そして先ほど福島原発の事故の話をしましたが、日本ではもう忘れかけていますね。
2年経ってあんまり被害が出ていないからこれは大丈夫なんじゃないかみたいに言う人が多いんだけど、今回の放射能のレベルはチェルノブイリのレベルとほぼそっくりです。

 
 チェルノブイリでは何が起こっていたかというのを調べてみると、80%以上の子どもたちが残念ながら血液関係の病気になったりしています。8割ですよ。それがいったい何年ごろに起こったかというと、実は事故が起こってから6年以降なんです。

 日本では今(2013年現在)まだ2年しか経っていないですね。だから今はまだ大して起こらないんです。だけど怖いのは、6年経った時点、つまり日本で言うと2017年になった時にどうなるかが最大のポイントです。

 2017年にはおそらくチェルノブイリよりも日本の方が人がたくさん住んでいるので状況が悪いです。

 
 チェルノブイリでは1年間に5ミリシーベルトを超えるところは国の費用で人を引っ越しをさせました。ところが日本では20ミリシーベルトの地域にも人が住んでいます。

 
 この1ミリシーベルトというのはどれくらいのものかと言うと、皆さんの体の中に細胞が60兆個あります。60兆の細胞全部の中に核という遺伝子が入ったものがあるわけですが、そこを放射線が60兆の細胞全部を1回ずつ突き抜けた時が1ミリシーベルトです。

 ですから今20ミリシーベルトまで住んでいいと言うのは体中60兆の細胞の遺伝子を1年間に20回も切り取られるという事態になることになります。

それは通常の免疫力だけではさすがにカバーしきれないと思う。


 それを考えると2017年に日本でもひどい事態が生まれるんじゃないかと思います。
そしてその時に1番怖いものは何かと言うと外から放射線を浴びること、これも十分怖いんですが、それよりもっと怖いことがある、それが内部被ばく、放射能汚染されたものを体の内側に入れちゃうことです。


 例えばみんな食べ物でセシウムを気にします。
セシウムはガンマ線でしか測りますが、そのガンマ線をセシウムは1回出すけれど、それ以外に測ることができないベータ線を3回も出しているんです。ベータ線を3回出したあとにガンマ線を1回です。ところがガンマ線でしか測っていないんです。

 そうすると、実際にはそのベータ線の影響が大きくなるのに、そちらの計算がされていない。それを食べてしまうと体の至近距離から撃たれてしまうので被害が出やすい。

 その時に怖いのは気にしていない人たちなんです。例えば東京埼玉周辺でも気にしていない人がいました。子どもが中学生なんですが白血球の中の好中球というものが3分の1以下に減ってしまった、とにかく引っ越しをしなければならないということでどこかに引っ越すことになりました。

 そしてセシウムは体の中の筋肉に貯まりやすいので心臓に貯まります。心臓は筋肉の塊、しかも心臓の筋肉は1年間に0.4%しか生まれ変わりません。そのおかげで心臓の筋肉がやられていくと、だんだん心筋梗塞、そしてまた軽いもので言えば不整脈、こういったものにつながっていきます。

 今福島県内ではその心臓病によって死んでいく人が異常に増えてきています。こういう風になってしまうのは、放射能汚染されたものを食べた人がそうなります。こっち(西日本)の食材、この地域で作られたものは放射能汚染の心配が要らないのでとりわけ汚染がひどくなるきのこ、山菜、川魚とか、そんなものはこっちで採れたものであれば大丈夫です。

 だけど今福島でこっそりとタラの芽だとかの山菜を収穫している人たちがいるんですよ。その人たちが何と大阪の市場に売りに来ているそうです。

 そうすると安全でない食べ物が入り込んでくる可能性があって、それを気にしないで食べた人と、福島県の人はものすごい食べ物にも気にしていますから、その福島の気をつけている人と、こっちで気を付けていないで食べてしまった人どっちが被害が大きくなるかと言うと、これはチェルノブイリでも同じ事態がありました。


 被害は、それを食べてしまった人の方に大きく出ます。だから気をつけなくちゃいけないと思う。


危険な原発

  そしてぼくはこのたかが電気のためにこんな危険な思いをする必要はないと思っています。そしてここ(愛媛)の近くには残念ながら原発、伊方原発がありますね。

 この伊方原発は“加圧水型原発”というもので、これは熱湯をコップの中にジャバっと入れるとパキッと割れちゃうことがありますね。あれと同じことが原子炉で起こるんです。
原子炉は逆にものすごく熱い。

 いざ地震だ、大変だとなって水を緊急にかける、そうすると割れちゃう危険があるんです。だからこの原発を再稼働するのは危険すぎると思っている。だけど残念ながら伊方原発が日本の中で最初に再稼働されそうな状況にあります。

 日本の中には中央構造線というのがありますね。1,000km以上の長さで中央構造線がある、この中央構造線はもちろん地震を起こします。そしてここに地震が起こった時にどうなるのかについて、この四国電力は何とその長さを※54kmだけの間で地震が起きたとして、という仮定をするんですよ。

 いや、その中央構造線は1,000kmを超える長さがある、この長さに応じて地震は大きくなっていくんです。それをわざわざすごく短く切って、ここしか地震は起こらないと言って仮定をするというのは、ぼくはどう考えてもおかしいと思う。

 だからこの原発を動かして、中央構造線で地震が起こってしまったらどうなるか?
真上に立ってますから中央構造線から100kmも離れていません。

 そこでどーんと地震が起こってしまった場合、ぼくはとても危険だと思う。急に冷やさなくてはいけないと言って水をかけてしまったら、この加圧水型原発は残念ながらその急に冷やした水をかけてしまうと原子炉容器そのものがぱきっと割れかねないんです。

 それを考えるととてつもなく危険だ、しかも今回福島原発でも事故が起こったのは日本人とってはとっても不幸中の幸いだったんです。何かと言うと、日本は偏西風地帯、1年中西風が吹いているんです。そのおかげで東の端っこにあった原発で事故が起こったので、放射能の7割以上は太平洋に流れました。だからまだまだ救われたんです。

 だけど伊方原発で事故が起こったらどっちに流れます?
それは西風に押されて日本の一番中枢である地域をずーっと汚染していくことになってしまうんです。


 ぼくはそれは、たかだか電気のために割の合わない考え方だと思っています。ぼくは確かにこの電気自動車、バッテリー、太陽光パネルを買うとかしていますが、決して安い買い物ではないし、元がとれるわけではありません。

 だけどぼく自身あえて買おうと思ったのは、お金の問題じゃない、自分たちの命の問題だと考えた時に、お金が安いから原子力を動かしたいのかという風に考えたわけです。


 そして原子力は実際には値段が高いです。日本の電気料金は世界で一番高い。ドイツが高いと言われるけど、ドイツの倍ほど高いんですよ、原価で見てみると。だから日本の電気料金はめちゃくちゃ高い。

 それは何でかと調べてみると原子力というコストの高い発電をやったせいです。だったらもうそろそろみんな目覚めてもいいんじゃないかと思う。日本はこれまで大本営発表によって騙され続けてきた戦時中の人たちと一緒です。日本の軍隊は連戦連勝だと言われながらいつの間にか敗戦になってしまった。それと同じような事態に今陥っていると思います。

 電気が安いから原子力がいいから、冗談じゃない、そんなことのために日本の電気料金は世界一高くなり、現実に国際競争力を失っているじゃないか。

 そうではない、新しい社会を作っていくためにまず自分にできることは何だろうと考えていったならば、別にそんな遠い未来の話ではなく、自分のこととして次の仕組みにトライをしていくことができるんじゃないかと思います。

 ぼくの家はそういうわけで(電気の自給自足)実験中で、これまで80日間まるっきり中国電力の電気は使っていません。完全に自給できています。こういう風に暮らしていくことも可能な時代になりました。


消費者から生産者へ

 ぼくはもう一つ不思議に思っていたことがあるんです。

 例えば昔なら100人の人が何十日もかかって作っていた車が今では機械が数分で作ってしまうわけですよね。ではその労働生産性が高まっていった分は何で我々給料が安くなったり労働時間が短くなったりしていないんだろう?すごく不思議に思っていました。

 だけどそれを使う方法がありました。
それは何かというとモノを生産する用具の値段が下がっていたんです。発電機、バッテリーとか。たとえば今バッテリーを買ってくるよりも何とリーフをそのまま買った方が安いんですよ。そういうところに労働生産性の向上というのは生きていたんです。

 だったら、我々が消費の側にモノを使っていたからいけないんだ、それを生産の側に変えて我々が消費者と呼ばれるのはもうたくさんだ、それよりも我々は生産をする主体なんだ、社会の中心になっていく、生産の主体になるんだと生まれ変わっていくことが大事だと思います。

(中略)

日本を変えていくのは地方の、地域からだと思っています。
ぜひみんなで一緒に社会を作っていきましょう。

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※動画では300kmと話していますが、正しくは「54km」でした。
(もっと短い距離でした・・)
詳しくはこちらのHPをご参考ください
http://www.shikoku-np.co.jp/feature/tuiseki/555/  (スタッフ)