2015年6月17日

『お金の強制力に打ち克つ方法は』  

田中優無料メルマガ より

■サラ金と生活保護   
 今から30年前、ぼくは生活保護のケースワーカーをしていた。その頃に急激に増えたのがサラ金だった。生活保護費を支給しても、そのカネがサラ金業者に流れてしまう。
 そして本人はサラ金から借りていることを隠そうとし、乏しい生活保護資金の中から何とか支払おうとするのだ。特別な加算がなければ生活ぎりぎりの資金しか渡されない。 その中から支払おうとするので、生活は辛酸を舐めるものになる。しかもサラ金が規制された今とは違って、その金利は年間109.5%まで許されていた (現在は借入額によるが、上限が20%となっている)。   

 ここで計算してみよう。

 たとえば50万円の借り入れをしたとする。その金利は年間54. 75万円になる。すなわち金利だけで月額 4.56万円だ。当時、特に加算のない単身者では家賃を除いて5万円程度しか支給されなかった。その中から返そうとしても返せるはずもない。  

 そうして辛酸を舐める生活をしながら、膨れ上がっていく借金に怯えながら暮らすのだ。


■サラ金問題を解決できるケースワーカー  

 ぼくは勤めている自治体が契約している弁護士に相談した。 「サラ金問題を解決したいので、本人に代わって交渉していいだろうか」と。本来で言う と弁護士法違反になりかねない。確認をしたわけだ。「ケースワーカーは本人の生活に関わって仕事をするのだから、良いと思いますよ」という返事を得て、サラ金業者に連絡を 取ることにした。

  「今、本人は生活保護を受けてしまっているので、生活資金に余裕はありません。余剰の 資産がないのですから、今すぐにでも自己破産することが可能です。そうするとそちらに 一銭も払えないことになります。…ですが本人はなんとか返したいと言っているので、 金利を除いて元本だけ、少しずつ払わせてもらいたいのですが」と。 

 もちろんサラ金業者がそう簡単に了承するわけもない。「では近日中にご返事いただければありがたいです」と伝えると、しばらくするといやいやながら認めるのだ。  

 こうして世にも珍しい「サラ金問題を解決できるケースワーカー」になったわけだ。

 もちろんこの方法は、法律に詳しくないとできない。その結果、担当ケースワーカーによって受給者に大きな差ができてしまった。法的な経済支援なのだから、金融・法律・経済に強いケースワーカーが多くなるといいのだが。   

 なぜこんなむごたらしい事態が起こるかと言えば、それが大きな利益につながるからだ。 規制が厳しくなった後、サラ金は大手銀行などが直接関わって運営されるようになった。 それ以前も良い投資先として、銀行と隠然とつながっていたのだ。

 そう、サラ金は資金稼ぎとして大事だったのだ。  


■カネの強制力の前には     

 山一證券が破綻したとき、ある大学の先生が現場に駆けつけたところがテレビで放映さ れていたと聞いた。それ自体は別に不思議でもないのだが、その先生は大学で「倫理的な 投資」だとか「社会的投資」だとかを講義されていたそうだ。

 不思議なことに人は、口で言うことと実際にすることは大きく異なってしまうものだ。 ぼく自身だって百均でモノを買うし、安いモノを買わざるを得ないことも多い。カネの強制力はわれわれの意志などよりよほど強い。 

 さらに「利益の極大化」だけを求める民間企業の場合にはもっと強烈だ。サラ金では7%ほどの人が返済遅延に陥るという。規制が厳しくなる以前は、これに対するおぞましい 解決策があった。生命保険を掛けて半年以上経てば、自殺でも保険金が下りるのだ。

 ある退職した女子社員の手記に、こんな一節があった。  
「返済できなくなっていた契約者を自殺に追い込むと、みんなでお祝いをした」と。

 事実、2006年3月期にはサラ金17社で自殺により43億円が回収されたことがわかっている。 

■新たな解決策がないだろうか        

 やせ我慢ではなく、おカネともっとうまくつき合うことはできないのだろうか。   

 もし自分が駅前の銀行に0.1%の金利で預けていて、隣の人が同じ銀行から4.1%でロー ンを借りていたとするなら、直接やり取りすれば互いに2%ずつ得することができる。
 金利なんかに頼らないとするなら、ローンを組む側は2%でもいいだろう。  

 そう、それが未来バンクの仕組みなのだ。    

 それをもっと使いやすいものに、もっと画期的なものにしたい。そのために未来バンクでは※「作戦会議」を始めた。   

 20年経って、また新たな再スタートを切りたいと思う。「おカネのいらない社会」だとか「地域通貨で成り立つ社会」「金利がマイナスになる社会」とか聞くが、本当にできるのか。

 理屈ではなく現実として新たなものを生み出す方法が必要になっているのだと思う。

 「駅前の銀行より、隣人の方が信用できる社会」を作るにはどうしたらいいだろう。 

 それが解けたら、もっと地域興しもできるようになるのではなかろうか。


※「作戦会議」は6月15日に開催致しました
http://tanakayu.blogspot.jp/2015/06/blog-post_13.html   


本文は未来バンク無料メルマガ より転載
http://archive.mag2.com/0001300332/index.html