2015年12月12日

『太陽光発電、良い?悪い?』

2014.10.8発行 田中優無料メルマガ より

※このメルマガは転送転載、大歓迎です。

□◆ 田中 優 より ◇■□■□

『 太陽光発電、良い?悪い? 』


■設置をためらう人たち

 太陽光発電をつけたいけど「かえって環境に良くない」という話を聞いて、設置をためらっている人たちがいる。事実である部分もあるが、「味噌もクソも一緒」にされてしまっている部分もある。たとえばせっかく太陽光発電を付けたのに、「パネルを作るときのエネルギーを取り戻せないらしいわよ、かえってつけない方が良いみたい」なんて言われると、がっかりしてしまうだろう。その点以外に生産時の公害、廃棄時のリサイクル、有害物質の使用などが主要な問題点だろう。
 本当のところどうなのか考えてみたい。


■パネルはエネルギーの浪費?

 たとえば年に1のエネルギーしか生まない太陽光発電が、100のエネルギーを消費しないと作れないとしたら、エネルギーを取り戻すのに100年かかってしまう。これは作らない方がいい。この年数を「エネルギーペイバックタイム(EPT)」という。生産のエネルギーを取り戻す時間のことだ。小型の風車では実際に取り戻せないものもある。それは趣味なら許せるが、エネルギー的には損失だ。

 それでは一般的なシリコンの発電パネルはどれぐらいでエネルギーを取り戻せるだろうか。数年前のデータでも2年半ほどで回収できている。つまり最初の2年半はエネルギーを取り戻すのに使われるが、その後はプラスになるので長く使えば使うほど良いものになるのだ。今は2年半よりもっと短くなっているだろう。つまり長く使えば環境にプラスなのだ。

 ところが今のまま暮らしていると、電気を作っているのは「石油、石炭、ガス、ウラン」になる。ところがこちらはほぼ永遠に再生できない。同じEPTで言うなら、今の電気をそのまま使い続けていることの方が環境に良くないのだ。太陽光発電を断念させて今の電気を使わせるのは全く間違っている。


■でも健康被害を生むのでは?

 生産時の公害を問題にする人もいる。確かに生産時にきちんと対策しないと、公害源になるのは事実だ。実際にぼく自身、中国からの留学生から「環境に悪いから使わないでほしい」と言われたこともある。事実、中国では「がん村」と呼ばれるほど深刻な被害が、パネル生産地でも起きてしまっている。しかしそれは工場の公害規制の甘さによるものだ。規制の厳しい先進国や中進国ではこんな公害は発生させていない。
 私は東欧で生産されたものを選択した。現時点では、中国とインドで生産されたものを避ければよいのだ。

 もうひとつ、「有害物質が含まれている」とも言われる。これは事実であるがすべてではない。太陽光発電の種類には従来からのシリコン系のもの以外に、薄膜系、合金系がある。このシリコン以外のものには現状、有害物質が含まれている。しかしその代わり、生産時のエネルギーがきわめて少ないものが多い。

 「リサイクルできない」と言われる理由も同じで、シリコン系のものは複雑ではないのでリサイクル可能だが、合金化されると分離が困難なのでリサイクルできなくなる。有害物質を含み、リサイクル困難なのは一般的でないシリコン系以外のパネルの話なのに、すべてがダメであるかのように言うのも間違いだ。

 ただし「ソーラーフロンティア」の合金系パネルだけは例外だ。最終的に回収することを約束しているからだ。


 現状ではリサイクルされていないではないかと言われそうだが、考えてみてほしい。パネルが大量に売れ始めたのはせいぜいここ5年のことで、しかもパネルは少なくとも20年は持つのだ。我が家のパネルは25年後に85%の出力保証がされている。変な使い方をしなければ、50年後にも半分の発電量があるだろう。

 つまり現時点ではリサイクル事業を始めたとしても閑古鳥が鳴いてしまい、閉鎖に追い込まれることが必至なのだ。経年劣化がどうなるかが不明だが、シリコン系のパネルであればリサイクルは困難ではない。


■では設置して売電すればいいのか?

 この点で私は少数派だか、売電の今の仕組みでは未来を作れないと考えている。
というのは太陽光発電の生んだ電気はアテにされず、いくら設置しても原発を含めて従来の発電所が減らされない仕組みにされているからだ。


 売電すれば経済的には利益になるが、その実、送電線の仕組みは家から発電される電気を流せるようになっておらず、トランスを同じくする近所数軒に流れるのみで、それ以外の電気は無効電流となって送電線を温めるだけで消えてしまっている。

 だから私はオフグリッドを選択した。オフグリッド、グリッド(送電線網)につながずに自給する仕組みだ。儲からないどころか経済的には損失だが、それでもこちらに未来があると考えて選択した。

 しかしすでに設置して売電している場合はどうすればいいだろうか。売電契約は家庭などの10KW未満の設備の場合、わずか10年で終わってしまう。先ほど見たように長く使えるし、使えば使うほど環境に良いものになるのに、10年で格安の売電価格に下げられてしまう見通しだ。そう、その時に廃棄するのではなくオフグリッドにすればいい。安い値段で売るより、自宅の電気をそれでまかなってしまえばいいのだ。


■未来の仕組みへ

 そう考えると、今売電していたとしても問題ない。売電価格が下げられてしまう時点でオフグリッドすればいいからだ。しかも最近、画期的な技術によってバッテリー価格も著しく低下している。10年後にはもっと進展しているのではないだろか。

 同じように現時点で難点のある薄膜型や合金系のパネルも見捨てないでほしい。発電するための物質の組み合わせは無数にあり、やがては有害物質を使わなくても作れるようになるはずだからだ。要は将来性を占うことが重要だ。原子力はその点で絶望的な技術だった。しかし太陽光パネルには可能性が開けてくるだろう。

 太陽光発電も初期は「生産時のエネルギーを回収できるもの」ではなかった。しかし今ではわずか2年半ほどで取り戻せる。今、それが実現したのも、あの時点で断念しなかったおかげなのだ。

 将来の可能性に対して吟味することが大事なのだと思う。もし南の屋根に余裕があって経済的にも可能なら、胸を張って設置してほしいと思う。