2017年8月11日

『 省エネが先だろ 』

(2012.3.15発行 有料・活動支援版メルマガ "未来レポート" 第9号より)

『 省エネが先だろ 』

■ ライフライン

「トイレットペーパーってないと困るよな、
 生活必需品というか、ライフラインの一つだよな」

「まぁ、確かにないと困るよな」

「しかも大腸菌は紙5枚分は抜けるそうだから、
 オレは大事をとって50枚重ねて使ってるんだ」

「……。」

「そうすると一日のトイレで丸太一本分は使ってしまうんだ。
だからさ、いくら森が必要だと言われても、衛生のためにはやむを得ないと思うんだ。
日本の森だけでは足りなくなるから、海外から輸入するのもやむを得ないだろ?
それなのに森林伐採とか、熱帯林破壊とか騒ぐやつらがいるんだよ」

「いや、それは使いすぎ…」

「しかもだよ、他の方法でトイレットペーパーを作る方法も提案せずに言うんだぜ。
竹ならいいじゃないかって言うやつもいるけど、お尻が切れちまうぜ。
どうしてれんだよ、裂けちまったら」

「いや、それ以前に使い…」

「黙れってんだよ、だって代替策も提案しないで伐採を止めろなんて、身勝手すぎるだろ? そう思わないか?」

「いや、使いすぎだろ、トレペ」



■オフィスが節電したらどうなるか

 たとえたら、こんな感じじゃないか、今の原発の電気問題。
代替策考える前に、使いすぎだろ? 電気。

 しかも家庭じゃない。2010年の電気消費量のうち、家庭が消費していたのはわずか22%にすぎないんだから。家庭より前に、無駄遣いしている事業者を問題にすべきだ。




 「乾いた雑巾だから絞っても水も出ない」なんて言うんだけど、事業者は現在、たった3年で元が取れる省エネ機器を導入していないんだから。でもオフィスは無理、なんて言うんだけど、オフィスの電気消費の45%がエアコンで、21.5%が照明、その他コンピューターなどの消費が21%ある。




 その照明なら、簡単な省エネ方法があるんだ。
 もちろん白熱球を使っているんなら、蛍光灯やLEDに変えたほうがいい。だけど蛍光灯だってまだできるんだ。蛍光灯の光は天井に向けても光っている。この分は天井に当たってわずか35%しか下に落ちてこない光なんだ。でも天井側の光を効率良く反射させるステンレスの反射板を使えば、95%も反射させることができる。






 それにインバーターを入れていけば、一本の蛍光灯で二本分の明るさが取れるんだ。半分で済むんだから、10.2%は省くことができるだろ。


 エアコンだって対策がある。
 もともとエネルギーの話をするときには、自然エネルギーの導入と言う前に、省エネすることのほうが安くて効果的なんだ。

 熱の省エネは断熱だし、断熱すべき場所は窓だ。窓から熱の半分が逃げていくからね。その窓に使われているアルミサッシのアルミという物質は、もともと熱伝導性が高すぎるんだ。触ってみればわかるけど、外と同じ温度になってしまっている。
だから窓枠はどうしても結露するんだ。

 その窓の内側に、木製サッシを一枚入れてみたんだ。ぼく自身がやっている非営利の住宅会社、「天然住宅」でね。

 そしたら家庭では暖房器具を使わなくなってしまった。何より足元が暖かくなるんで、寒く感じなくなったんだ。実際温度を測ってみたら、もともと冷たかった足元の温度が、1mの高さの温度と同じになった。窓枠から入り込んだ冷気はそのまま下に落ちて、足元を横に這っていたんだ。

 それを東京のオフィスに入れてみた。すると一日10時間使っていたエアコンが、朝1時間点けるだけで、あとは消すようになってしまった。特に冷え症の女子職員に喜ばれたんだ。足元の寒さが問題だったんだね。

 さらにいいことがあった。冷え症の女性たちは机の下に電気ストーブを置いてたんだ。あの効率の悪い電気ストーブを。それがいらなくなったんだ、さらに電気消費量が減ったんだ。さらには火事の心配もなくなったし。


 ここまでうまくいかなかったとしても、半分は減らせるだろ。そうすれば23%ほどの電気は減らせるだろ。


 次に考えられるのがガスヒートポンプエアコンへの入れ替えだ。電気消費量は20分の1に激減するし、CO2排出量も3割少ない。

 さらにパソコン類はノートパソコンにすれば電気消費は少ないし、万が一の停電でもデータが消えたりしない。それらは待機電力がものすごく大きいものだから、スイッチ付きコンセントを入れればさらに減らせる。


■メタンハイドレート発電の前に節電を

 そんなことを会社がやりたくなるように、電気料金を節電すればするほど安くなるように設定すればいいんだ。

 ところが今の日本では、事業者の電気は使えば使うほど安くなるようになってし
まっているから、やる気がしないんだよ。この料金体系は犯罪的なものじゃないか。
節電しようとするやる気を失わせる仕組みなんだから。


 このオフィスの節電方法は、「特定規模電力(PPS)への乗り替え」を提案してきて、全国的に実現した「電気をカエル計画」の石井くんが進めているものだ。その石井くん自身は「PPS乗り換えは解決策にならない」と言う。自由化対象の事業者消費分の、わずか3.5%しかまかなえないからだ。だから彼は今、トクする省エネの提案を続けている。石井くん自身はどこにでも説明に行くと言っているから、もしわからなかったら彼に相談してもらえばいい。
http://yydeck.sakura.ne.jp/sblo_files/kanagawakaeru/image/shiga.pdf


 もし全国の事業者が電気消費量を半分に減らしたら、78%の半分だから39%の発電設備は要らなくなる。原発の設備量は福島事故前で20.1%、原発だけ強引に動かして発電させているけどそれでも全体の30%だから、原発は一基もなくても困らないだろ?

 われわれは人が良すぎて、いつでも供給側の心配ばかりしていて、風車では不安定なんじゃないかとか、低周波騒音だの鳥がぶつかるだのと心配している。

 でもその前に考えるべきことがあるんだ。
一日に何メートルもトイレットペーパーを使っているのは「使いすぎだろ」ということなんだ。

 風車も「風レンズ風車」が開発されて、騒音や鳥がぶつかる問題もかなりクリアーできるようになった。

 
 それよりはるかに問題なのが「メタンハイドレート」なんだ。
ところが新たなエネルギーだとか言われて、人々の大きな期待を集めてしまっている。
メタンハイドレートは、陸から伏流水を流れてきて大陸棚に貯まった有機物の分解ガスではないかとぼくは思っている。要は生き物が嫌気性微生物菌によって分解され、メタンガスになったものだ。それが地下にあるときは、圧力によって水に溶けている。

 それが海の大陸棚に流れ込んでシャーベット状に積ったものだと思うのだ。だからそれはとても微妙な条件の元で積っている。安定して存在しているものではないと思う。少しの海流の流れの変化で、溶けだしてしまうのもそのせいではないかと思うのだ。

 これが溶けだしたことが地球の歴史には数回ある。そのときには二酸化炭素の20倍以上の温室効果があるために、地球のすべての水分が蒸発し、地球全体の海が蒸発してほとんどの生き物が絶滅したそうだ。そんな恐ろしいものを、手柄と見栄しか考えていない学者たちの玩具にさせるのは危険だと思わないか?
 彼らは全然分かっていないんだ、それがどんな事態につながるかを。原発並みにタチの悪い話じゃないか。


■使いすぎなければ解決できる

 だから解決策は、いつも需要側にあるんだよ。電気を供給する発電の問題じゃなくて、電気を消費する側に。

 なのにわれわれはいつもお人良しに、電力会社の論理に巻き込まれてしまっている。
 いつから電力会社の社長になったんだい? 

 そんなことより消費を減らせば足りることなんだ。「自然エネルギーの導入を」とすら言う必要がない。

 原発を止めるだけなら節電だけで足りるからだ。

 次の地球温暖化なり、雇用の促進なり考えるときに言えばいいだけの話なのだ。
だからごっちゃにしてほしくないんだ。節電で足りる原発の話を、自然エネルギーとごっちゃにしないでほしいんだ。

 ドイツが自然エネルギーをものすごく伸ばしたって誰もが感心しているけど、ドイツのすごさはそっちじゃない。ドイツがすごいのは、長年にわたって電気消費量の伸びを抑制していることなんだ。日本だって自然エネルギーはそこそこ導入したんだけど、日本の電気消費はそれ以上に伸びてしまっているから、だから未だに永遠の2%止まりなんだ。

 消費を減らさずに自然エネルギーを伸ばしたら、今度は自然エネルギー利権が発生してしまうだけで終わる。

 そうじゃなくて、消費を減らせば減らすほどトクする仕組みを入れてあげればいいだけなんだ。


 だからさ、最初の男にはこう言えばいい。

「トイレットペーパー、使いすぎだよ。
使いすぎなければ、木は毎年伸びてくれるから足りるはずだよ。
そうすれば永久にトイレットペーパーは使えるから、心配しなくていいよ」と。




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