2010年5月6日

NPOバンクから、感謝をこめて

【転送歓迎】

全国NPOバンク連絡会、未来バンク代表の田中 優です。

みなさまにご協力をお願いをしてきましたNPOバンクの貸金業法、信用情報機関への登録について、適用除外を得ましたので、みなさまに感謝を込めて報告いたします。

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市民にバンクをつくる権利を

~NPOバンク、貸金業法規制の適用除外を獲得、関係するみなさまに感謝します~

『NPOバンクの悩み』

 NPOバンクというのは、市民が自分たちで資金をコントロールして社会を作っていこうとする非営利のバンクだ。人々から配当なしの出資をしてもらい、その資金を、自分たちの希望する社会づくりに貢献する活動に低金利で融資する。


 これまでの貯蓄と違うのは、人々の意志をおカネに込めている点だ。環境改善に使いたい、福祉活動に使ってほしい、市民の社会的起業に融資したい、と。従来の貯蓄の使い道は、戦争資金だったり環境を破壊する事業だったりしていたから、貯蓄のマイナス影響をなくしてプラスに転じさせるという意味で、画期的な仕組みだった。

 しかしこれまで、NPOバンクを実現するための法的な枠組みが存在しなかった。そのため、サラ金と同様の「貸金業法」の登録をしなければならなかった。しかもサラ金問題のために貸金業法が厳しく規制され、そのとばっちりがNPOバンクにまで及んできてしまった。もちろん私たちもサラ金規制には大賛成だが、それによってNPOバンクの存続が危うくなる状態が起きてしまった。

 私たちにとって最大の問題は、信用情報機関に登録しなければならないという問題だった。信用情報機関とは、サラ金から借りる人の情報を集めるもので、多重債務者を発生させないために借入の状態を把握するための機関だ。


 困るのはここに情報が登録されると、自動的にサラ金から融資を受けているものと思われてしまう点だ。NPOバンクから融資を受ける人たちは、NPO活動を進めている善意の人たちで、ほとんどサラ金とは無縁の人たちだ。ところが信用情報にその人たちのデータが登録されてしまうと、サラ金からおカネを借り入れているものと推定されてしまう。すると(これは現実に起きていることだが)、就職に不利益になったり、住宅ローンを拒否されたりする可能性がある。

 私たちはそんな不利益をNPOバンクの利用者に及ぼすぐらいなら、潔くNPOバンクを廃業してしまおうと考えた。もちろん資金を借りて事業を進めようとするNPOにとっては打撃だが、NPOバンクを利用したことで不利益が及ぶとしたら、活動を続けられないと考えたのだ。

 と同時に私たちの慣れないロビー活動が開始された。貸金業法の前は金融商品取引法の規制、貸金業法の純資産額の規制、そして今回の信用情報機関の問題だ。


『周りの人たちのおかげで』

 結論から言えば、すべての規制を適用除外させることに成功した。最後の信用情報機関への登録は、特定非営利活動促進法(NPO法)の予定する「17活動分野に対する低利融資」は適用除外となった。もちろん私たちも活動したが、それ以上に頑張ってくれたのは、「全国NPOバンク連絡会」に集ってくれた人々だった。弁護士・公認会計士などの専門家の方々、そして実務を法的、社会学的に問い直してくれた人々のおかげだ。

 そもそもを言えば、日本初のNPOバンクとされる「未来バンク」もそうだった。私自身が代表を務めているが、この仕組みを作ってくれたのも他のメンバーだ。私自身にできたことは、ほんのわずかしかない。周囲の人たちのおかげで設立し、活動し、そして今回の適用除外が受けられた。これが市民の善意の集まりのおかげだとしたら、その先に未来が作れる思いがする。


 今回のことでは、国会議員の人たちにも大変お世話になった。人々はよく言う。「政治家なんてどれも…」と。 しかし違うのだ。私たちが知り合い、応援してくれた議員の人たちは、どの人も無私の努力を続けている人々だった。それで利益が得られるわけでもないのに、身を粉にして努力してくれた。

 さらに会ったこともないのに私たちのことを支援し、客観的に評価してくれた多くの人々にも感謝したい。人々は利益のために動くばかりではない。「無私」の思いが私たちの後ろ盾になってくれた。「今の社会は…」と、とかく言われがちだが、「無私の思いで活動してくれている人たちが、これほどたくさんいるのだ。配当すらできないNPOバンクに出資してくれている人たち、活動を支援し協力してくれる人たち、そっと助言してくれる官僚の人たち、活動を支えるために努力してくれた政治家の人たち…。彼らの活動があったおかげで実現できた適用除外だった。


『市民がつくる未来へ』
 今、新たな課題としているのが、「NPOバンク法(仮称)」の制定だ。今やっと適用除外を得て、活動もしやすくなったとはいえ、それでも設立は簡単ではない。


 そもそも金融には非営利活動という考え方がない。欲望を活動原理とした金融活動の調整と、欲に目が眩んだ人々がだまされないための規制と。しかし、そうではない金融の仕組みが必要になっていると私たちは思う。生活は欲望だけによって成り立つものではない。ビジネスライクな関係より、もっと互いの利益のためにする活動のほうが多くを占めるのではないだろうか。それに対応した社会的な仕組みが必要になっていると思う。

 非営利の活動領域は、これまで考えられてきた領域より、もっとずっと広いものであると思う。それに対応した法的枠組みを実現していきたいのだ。

 そのためにも、私たち自身が信頼を得られる努力をしていかなければならない。私たちは「全国NPOバンク連絡会」を発展させ、「全国NPOバンク協会」を設立しようと進めている。


 そこに加入できるのは、本当に無私の思いで他者を豊かにする努力をしようとするNPOバンクだけだ。そして今回のことで、はっきりしたことがある。私たちは自分たちの力以上に、外の人たちに支えられていると。

 これからNPOバンクを設立しようと考えている人たちだけでなく、こうした無私で互恵的な活動に興味を持っている人たちにも参加してほしい。私たちだけでは十分ではない。しかももしかしたら自分たちに好都合なことだけを進めているかもしれない。それを諌めてもらい、より社会的に必要なNPOバンクの実現をめざしたい。

 本当にみなさま、ありがとうございました。そしてこれからもご支援ください。私たちのNPOバンクは、その下支えのおかげで成り立っています。

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