2010年12月8日

12日 無料フォーラム@早稲田大学 「木で暮らす  -木で稼ぎ、木で生きる-」


□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□


木で暮らす、木で稼ぎ、木で生きる

文科省助成プロジェクト

 JST(独立行政法人 科学技術振興機構)というところから、一般社団法人「天然住宅」が助成金を受け、今、実際に調査を進めている。そこで先日合宿があった。合宿なんてなんと懐かしい響きだろうか。そこに助成を受けている団体約16、総勢100人余りがホテルに集まり、文字通りの合宿を行った。全国各地から集まった人たちは、電気自動車あり、小規模水力あり、地元学あり、地域活性化や木材利用ありと、さまざまな試みをしている。ただ、各団体10分程度のプレゼンだったから、もちろん十分に伝えられる時間ではなかったけれど。

 ぼく自身も発表した。時間はわずか13分。その中で私たち天然住宅の進めているプロジェクトの方向性と、そのユニークさをアピールしなければならない。終わったとき、なんだかぐったりした疲れが出た。ふだんの90分の講演会より疲れた感じだ。プレゼンは好評だったようで、その後すぐに他のプロジェクトの方から相談があった。


画期的な森を守る仕組み

 しかし全体の中でも正直、天然住宅の進めていることは画期的なものだなと感じた。なにより天然住宅プロジェクトが、コストを非常に気にかけていることだ。どんなにいいものでもコスト倒れしてしまっては現実的にならない。社会変革を進めるには、コストを含めて現実的でなければならないからだ。天然住宅ではそれぞれの事業の最大コストを把握している。たとえば育林・施業では最大コストが草刈りだ。だから森林酪農の仕組みを入れて、牛たちに林内の草を食べてもらおうと考えている。木材会社のコストでは、現金で購入し、家が建つまで入らない木材費の金利が重要だ。だから時間のかかる木材乾燥の工程を短くするために乾燥炉を開発している。また同時に非営利のNPOバンクである天然住宅バンクを作り、金利負担を下げる努力をしている。このバンクの資金が、建て主を含め、さまざまな部分の金利負担の軽減に寄与している(天然住宅バンクの金利は単利・固定の2%)。

 調べてみると、木材価格が値上がりしたとしても林業者の収入の向上にはつながっていかない。たとえば製材・乾燥・仕上げ・組み立てなどの過程で、それぞれが3割の利益を乗せていたとしよう。すると100円だったものが、最終価格では482円になる。ところがそれらの事業者には、政府の補助金が出されている。この最終価格が482円から600円に上がったとしよう。すると上がった118円分が原価の100円に上乗せされて、林業者が218円得られるわけではない。各工程で赤字になっている部分を穴埋めされるために補助金が出されているので、補助金が減らされるだけになるのだ。結局税金がバッファーになって、生産者の利益につながらない。

 この解決策は、森の生産者と街の建て主の間を直接連携させて、マージンを個別に取り合わないことが重要になる。そのとき互いが価格で対立する構造も問題だ。一人が利益を得るためには、相手の利益を減らさないと得られない。だから互いに助け合うことができないだけでなく、相手の事情に興味を持たなくなる。その結果、工務店は木材会社の努力を知らず、木材業者は林業者の配慮に想いが至らなくなる。これを解決する仕組みが非営利の事業だ。非営利は「対立関係」を、「協力関係」に変える可能性を持つ。すると互いに互いの努力を知ることで、ものがたりのある商品を販売することができるようになる。
 工業化モデルを超える新たな商品の可能性を示唆するのだ。


12月12日、早稲田大学西早稲田キャンパスへ

 天然住宅とアンビエックス(天然住宅代表の相根昭典さんの設計事務所)を合わせて、一昨年立ち上げた住宅は4世帯だった。ところが去年は29世帯だ。すでに次の年度の受注も4世帯受けている。手ごたえが出始めている。しかも入居した人たちからは、心地よいと高い評価が得られている。これで日本中の住宅を健康的で、長持ちして、森を守れるものに改善したい。そのために非営利の仕組みで天然住宅とバンクを進めているのだ。

 そのJSTプロジェクトの中間報告を12月12日、早稲田大学で行う。住宅や森の再生に興味のある人たちに、ぜひ集まってもらいたい。早稲田大学、埼玉大学、工学院大学、名古屋大学などの先生たちの研究によってこのプロジェクトは支えられている。そうそう、いい忘れていたが、ぼく自身がこのプロジェクトの代表を引き受けているのだ。

 社会変革は、新たな商品から作ることができる。商品は社会変革のツールになり得るのだ。そこに多くの人たちの結集があれば、きっと実現できると思う。


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http://tanakayu.blogspot.com/2010/11/1212.html

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◆ JST研究開発プログラム
「快適な天然素材住宅の生活と脱温暖化を『森と街』の
  直接連携で実現する」
- 12月12日 ラウンドテーブル企画のご案内 -


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  木で暮らす  -木で稼ぎ、木で生きる-


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 私たちは4カ年の社会実践プロジェクトにおいて、森林
から家づくりまでの一気通貫を通じた、現在の社会課題 
-CO2削減、森林と林業の再生、長期活用可能な木造住宅- 
の解決を図ることを目的に、実践的研究を行っています。


 今回のラウンドテーブル型フォーラムでは、その入口で
ある「森林の視点」から課題解決の具体的な方向性を見て
いきます。
 そして、これからの日本社会で山側と都市側がともに
「木で暮らす」ためには何が必要なのかということを、
ご来場の皆様を含む様々なステークホルダーと共に考え、
提案していきます。


 日本社会を根本から立て直さなければと考えておられる、
専門家、事業者、NPO/NGO、市民など、幅広いご立場の皆様
の参加をお待ちしております。


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●日時: 12月12日(日)12:30~17:30
●場所: 早稲田大学 西早稲田キャンパス 57-201教室
http://www.sci.waseda.ac.jp/campus/index.html

●主催: 埼玉大学 名古屋大学 早稲田大学 
天然住宅 NPOまちぽっと
●申込: NPOまちぽっと  morimachi1@gmail.com
定員300名、無料(事前申し込み制)

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●プログラム
○第1部 「木で暮らす」ために、森でできること
     : 田中 優(未来バンク事業組合理事長)
○第2部 「山の自力更生:栗駒山の試み」
*テーマ1 生産性向上で問題を解決する
1)林業の自立に向けて
: 大西裕二(宮城県林業技術総合センター)
2)林業の自立に向けて          
: 平野直樹(東北職業能力開発大学校)
3)自立を支援する金融 
:田中 優(前出)


*テーマ2 高付加価値化で問題を解決する
1)木材の高付加価値化と事業      
:相根昭典(一般社団 天然住宅)
2)乾燥等における木材の化学的な変化
:福島和彦(名古屋大学大学院教授)
3)オーガニック住宅の認証        
:小川直也(アミタ(株)環境認証研究所研究員)
○第3部 総合討論 
「木で暮らす -新たな可能性を切り開く-」


登壇: 外岡豊 (埼玉大学経済学部教授)
    山崎真理子(名古屋大学大学院准教授)
    中島裕輔 (工学院大学工学部准教授)
    高口洋人 (早稲田大学理工学術院准教授)
    田中優 (前出)
相根昭典 (前出)
堀尾正靱 (地域に根ざした脱温暖化・環境共生
社会研究開発プログラム領域総括)
    岡田久典 (NPO法人バイオマス産業社会ネット
ワーク副理事長)
    山形与志樹(国立環境研究所地球環境研究センター
主席研究員)


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●申込先: NPOまちぽっと,定員300名,無料(先着順)
 メール: morimachi1@gmail.com
 FAX  : 03-3200-9250 (NPOまちぽっと)


●お申込みの際は、以下の項目をご連絡ください。
 ◆お名前
 ◆ご所属
 ◆アドレス
 ◆お電話番号


●問合せ: NPOまちぽっと(担当;奥田) 
      tel. 03-5941-7948

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